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安心と信頼(1) 結婚・家庭のなかの信頼

 友人が貸してくれた「魂萌え!」(桐野夏生)を読んだ。60歳を前に旦那が急逝して、孤独と老いの問題に直面する女性、敏子。そこに愛人や相続の問題が追い討ちをかけるリアルなストーリー。以前NHKでドラマ化されたようだ。Webサイトを見て、1話だけは見たかなと思い出すが、結末を知らないので印象に残っていなかった。

 このサイトに、「いい加減な気持ち」と題した原作者のコメントが寄せられている。孤独と老い。どちらも人間にとって怖れるテーマだ。それにどう立ち向かうのか。敏子が家出して泊まったカプセルホテルで出会ったフロ婆さんに言わせる。「ま、人間なるようになるわよ」。ああ。そうだろうなって思う。

 そんな気分になるには、一体何が要るんだろう。それはもちろん勇気であるのだろう。フロ婆さんほど苛烈な人生を歩めば自然に身につくかもしれないが、安穏な人生には勇気を支えるものがいる。それは、全面的な服従でも甘えでもない。最終的には、自立とそれを支える人への信頼だろうか。

 敏子が言う「信頼のオーラ」。これは夫婦がいろいろなイベントを越えていく中で、自然と構築されていくものであるだろう。しかし、敏子たちはそれを手に入れられなかった。なんとなくした結婚。それを補うように努力によってあわせようとした。旦那も合わせようとしていたことを知って虚しくなるのだが。

 そう考えると、熟年離婚も未婚者の多さも、このあたりに起因するように思う。互いに信頼するということの難しさに破れた人たちと、諦めて関わりを躊躇する人たち。信頼関係を構築できる可能性、いや構築しようという相互の意欲を探し出すことが、求められているのだろう。

 甘えから信頼へ。社会構造が変化する中、信頼は、一人ひとりが死にゆく孤独な存在として、個を確立していくために必要な原則なのだろうと感じる。

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