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経験と協調の衰退

 「指輪物語」、いや今では「ロード・オブ・ザ・リング」の方が通りが良いだろうか。このストーリーは、私にとって、懐かしい高校時代の思い出である。友人に紹介されて読んだこの現代に作られた叙事詩に、感動したものだった。

 そこに登場する「エルフ」と呼ばれる種族は老いることがなく、怪我や病で落命しなければ永遠の寿命を持つ。そこで、エルフ達はその永遠ともいえる寿命から得られる経験に基づく深い文化を形成していた。多分、著者のJ.R.R.トールキンは、そうした経験が生み出す知に対して、一定の評価を与えていたのだろう。

 しかし、その物語の舞台では次第に、限られた寿命しか持たない人間たちが幅を利かせ始める。人間達は命を惜しまず粗野だが、活動的な種族として描かれている。その繁栄と時期を一にしてエルフ達は衰退を始める…。

 不思議なことに、生命の論理と、自然の論理は違っているのだろう。永遠を求めて秩序を構築しようとする生命と、それを奪いあらゆるものを平準化しようとする自然。まさに、エントロピーにおける戦いである。こうした違いがあるにもかかわらず、地球という狭い空間に、我々が生きていることはなんということだろうか。
 そして、この秩序だった街に住む我々は、既に自然の脅威を凌駕したと思い込んでいる。自分のいのちだって、平均寿命くらいなら生きられるだろうと高を括っている。つまり、ちょっとでも出来が良くて、そのうえ思慮が浅いと、自分の思い通りに生きられると安易に信じ込まされる環境が今なのだ。

 秩序ははじめから与えられていたものではない。ましてや、個人が構築したものでもない。秩序が乱れれば自然の脅威は忍び寄り、自分の生きる場所さえ危うくなるという思いはないのだろうか。

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