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教育ってなんじゃ?

 優秀な人たちほど、自分が出来る人間であることを、自分の努力の賜物だと考えるらしい。人的資源しかないこの国で、大学教育がこれほど悲惨なものだとは思いもしなかった。文部科学省の力が弱いのだから仕方がないのかもしれないが、日々のやっつけ仕事に満足しているようなこの国で、高等教育が日の目を見るのは遠い日のことかもしれない。大学って学ぶ場所じゃないって思っているのか。

 それはさておき、教育には教える側と教えられる側の態度の問題がある。よりよく育ちたいと自覚している者は、それがどのようにしてできるのかを意識している。これは自立しているということで、自分の目指すものにどんなことが必要なのかを自ら考え、それをどのような手立てで、またどのような手順でもって進めていくのかをわかっている。
 人間はある程度の歳になれば、自分を構ってくれる人間はそれほど多くないということを理解し、自分で考えて生きなければ、人に相手にされなくなるのではないかということに気付くだろう。そうなれば、自分がどういう面で社会と関わっていくのかを鮮明にしなければ、生きていけないのだということがわかるはずだ。

 さて、目標がはっきりすれば、どうしていくべきかは見えてくる。これだけはおさえておかねばならないということが、決まってくる。それを一つ一つ丁寧に考え、実行していくということであろう。その場合に、どのようにそれらをこなすか考えねばならない。
 その意味において厳しい教育とは、その達成されるべきすべてを逐一その場その場で理解させるということでしかない。これはマンツーマンでしかできないことだ。彼らはできないことに一々向き合わされることになる。ストレスが溜まり、嫌な事ばかりで逃げたくなるのはわかる。現にそれらから逃避しているものもいる。彼らはそこで逃げても平気だだと思っている節が少し感じられる。
 集団を教育するためにはプログラムをつくり、その達成度を測っていくしかないのだと思うが、それを個人に対してきめ細かく行っていくだけの時間と余裕がわれわれに与えられているとはとても思えない。
 例外としては、優秀な一部の学生は、自分のすべきことを決意して、事に臨んでいる。彼らは自分の不足を正しく理解し、限られたリソースをうまく使っている。
 教育とは浮世離れしたことをするものだというが、当然のことである。浮世で学べることを学ばせることがどうして第一義なのか。それは家庭がすればいいではないか。そこでは足りないことを教えるのが教育であると思う。



 ただ、わたしは高い理想を彼らに押し付けているのかもしれない。今日は研究発表の練習だった。発表に臨んだ彼らは、わたしがここに赴任した後に入ってきた。だから、ここでの成果がはっきりとわかる。
 彼らが着実に進歩していることを、今日改めて実感した。一日一日で積みあがる何かを日々感じることは難しい。しかし、このような機会でそれを捉えることは出来る。ああ、私の仕事は無駄ではないのかと思う一方、こんな不出来な教員でもこのくらいの進歩が見えるなら、私なんぞ要らないのではないかと自虐的に思ってみたりもする。

 そしてこの練習でもうひとつ思ったのは、思っていることを伝えることの困難さである。自分の想いを、言葉なり、文章なりできちんと伝えるというのはそんなに易しくはないのだ。私はそのことを強く思い知る機会を得ている。両親の離別のきっかけは、想いが相互に伝わらないことに起因していたから。両親のように黙っていては分からないが、それだけではなく、表現力の問題もあるのだと思った。論文が今ひとつな者。発表が今ひとつな者。そうであっても、さまざまな質問に的確な対応をしてみたりする。
 相手の望むものを的確に捉え、それに応えていく。それをお互いに愉しみあいたいと思う。

 村上龍「13歳のハローワーク」に、教師のあり方が書かれている。人生の愉しみを学生諸子に伝えるのがその仕事だと言う。
 はたしてどうだろう。彼らに伝わっているだろうか。今の私には、申し訳ないが、その自信はない。

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