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博士の悲哀

 「理系白書」(講談社)は、理科系の人々のシビアな現実を丁寧な取材で浮き彫りにした興味深い本だ。しかし、こうした現実を直視しているのかいないのか、学生さんたちは安易な人生の選択をしているんじゃないかと感じないではない。
 昨日、また別のサイト「博士の生き方」を見つけて眺めていたが、具体的な数値に基づいた現状分析は、私自身の今後のありようも含めて必ずしも安楽ではない今を痛感させられる。

 まず、博士修了後の就職先である。私は学位取得後直ちに、運良くある研究所に常勤職で採用された。別に珍しいことではないと思うかもしれないが、今やすぐに常勤職に就けるなんて滅多にないことである。大概はポスドクを数年は経験しなければならない。研究者としての試用期間をきっちりとチェックされるのである。
 博士は研究をする者だ。これだけ大学院進学者が増えても、その認識は変わっていない。となれば、社会から見て、これほど扱いにくい存在はない。与える仕事が限定されるからである。実際に、博士修了者の就職率は6割くらいで、女性に限定すると更に下がって5割という。一方、学部卒で8割、修士で7割。進学するほど下がってくるのだ。要するに就職したいなら、進学しすぎるなということを意味している。
 今やコネや情実はあまり効かない。ポスドクくらいなら何とかなっても、常勤職に採用されるのはそれほど甘くないのだ。

 現実を見ないのは勝手だが、それを後悔するのも自分だ。今のうちから厳しい現実を眺め、日々精進して欲しい。楽に渡って行ける人生なんてないってそろそろ覚悟しないといけません。


 と、書いたのだが、国立大学も法人化すると、いろいろ考えねばならないことがある。
 博士課程の定員充足率が問題になっている。目安として定員の85%に足りていないところには、ペナルティがあるという。その観点からは、現実を見ようがどうしようが、進学する学生が増えることが大事だということになる。

 まあ、いつものやり方だなと思う。どの分野がいまどれだけの人材を必要としているのか、また、学生諸子が関心を持てる、もっと言えばある時間を研究なりに費やそうという覚悟をもてる分野かどうかということをどう考えているんだろうか。

 でももっと厳しく見れば、教育の成果としては、きちんと覚悟した上で進学することが望ましく、それで定員を満たすべきであるということなのだろう。しかし、それは現実を見ていないなあと思う。研究成果を挙げて研究費を稼ぎ、学生をきちんと教育し、大学運営にも熱心で、社会活動も行う。そんな立派な教員たれというつもりなのだろうが、わたしにはとっても辛い。どこかで気が抜けていないといけないのだが、それを許して欲しいっていう甘えがある。気を抜きたいなら抜いていいんだろうし、それは自分で決めることなんだけど、それが出来ていないんだな。と、いつもながら結局自分に帰ってきてしまう。

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